北地蔵


北海道、札幌。


有名な札幌時計台の裏にある「北地蔵」が私の気に入りの場所でした。


金曜日の夜、絵を習いに行くその前に寄って、


一杯の濃い目のコーヒーとしばらくの時間。


教室に通う楽しみは、そこから始まっていました。





場所柄、観光客もたくさん来店していたと思うのですが、


店内はいつも静かです。


入り口の間口に比して、意外と奥へ広く、


一番奥のカウンターの中に、細身で、めがねをかけたマスターがいました。


うつむきかげんで、何となくいつも困ったような表情の印象があります。


店内は薄暗いのですが、カウンターにはいくつかライトが下がっていて


その下なら読書も出来るくらいの明るさでした。





店の一番奥は、窓になっていて、


その窓から見る降る雪は、今でも良く思い出します。


きれいでした。





たいてい一人で行っていた店ですが、


私が福岡に引っ越すことになった時、送別会のお礼に


お友達を「北地蔵」へお誘いしました。


それがお店を訪ねた最後です。


事情を知ったマスターが、白いミルクピッチャーをプレゼントしてくださいました。


それまで話したこともなかったマスターですが、憶えてくれていたのかなって。


何だか常連客になれたような気がしました。





札幌に行くことがあったら、またあのカウンター席に座りたい。

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