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見えない都市
歳月のはしご
フィレンツェ−世界の都市と物語
フィレンツェ幻書行
ローマ散策





ローマ散策      河島英昭

旅の同行者からの推薦本、これは面白かった、充実していてしかも読みやすいです。
この本を手に、ローマを歩きたいと思う人がどれだけいるだろう。
未だ見ぬカンピドリオの丘や、古代ローマの壮大な建築物などをイメージするのを多いに助けてくれます。噴水がどれだけ大切なものなのか、オベリスクはどうして建てられ、どんな働きをしているのか。
きっと街の見方、体感のしかたが変わるでしょう。
<031113>


フィレンツェ幻書行    ロバート・ヘレンガ  村井智之・訳
 

表紙の美しさに惹かれ、読んでみたかった本。

フィレンツェは1966年の11月に大洪水にみまわれ、街中の素晴らしい芸術品、フレスコ画や貴重な文献などに大きな被害がでたそうです。
濁流に流されそうになる絵画を命がけで守ろうとする人々や水没してみるみるうちにはがれて行く教会のフレスコ画の壁画の描写は緊張感がありました。本は皮張りの表紙もダメージを受け、ページに紙を挟みこんで1冊づつ乾かさなくてはならなかった、そんな作業をするために世界中からボランティアが集まったといいます。
主人公はそんなボランティアの一人、司書のアメリカ人女性でした。彼女と1冊の本をめぐる話です。

面白かったのは、ふと現れる女性「マルゴー」、それは現実と違う道を選んでいた自分の姿です。今の自分に疑問を持った瞬時に、人はそれぞれの「マルゴー」を見るのだと思います。ちょっと映画「スライディング・ドア」を思い出しました。

イタリア旅行に先だって読んでいるので、書中に出てきた教会や絵画をメモ。
<031113>


フィレンツェ―世界の都市と物語   若桑 みどり 

教科書を読んでいるようでした、ちょっと堅いです。
でも、文庫本ながら情報量は豊富だし、白黒ですが写真も多く、勉強になりました。
<031113>

歳月のはしご      アン・タイラー  中野恵津子・訳 

初アン・タイラーでした、ファンになりました。是非いろいろ読んで見たいと思います。
さりげない描写が実に自然、日常を小説につむぐならこうあって欲しい、と心から思います。面白いのは主人公より周りの人物の方がその個性がはっきり描かれていることかもしれない、それでいて最も強く共感できるのが主人公の気持ちであるところが私にとって読んでいて心地良かったのだと思います。
未だ1冊しか読んでいませんが、この無理のない筆運びは、自然を心がけているというより、作者の持ち味なのではないかと思えるので、他の作品を読むのが本当に楽しみ、これははまるかもしれない、そんな予感がします。

さて題名の『歳月はしご』ですが、作中にただ1ヶ所老人ナットのセリフの中にその言葉が使われていました。彼は作品の終盤にもその心のうちを打ちあけ、その部分は作品全体を引き締めていました。その場で交わされる会話は人生を長く歩んできた人ほど深く感じることが出来るような気がします。<031023>





見えない都市      イタロ・カルヴィーノ  米川良夫・訳 

不思議な本を読みました、もの想う秋になかなかマッチした一冊です。
マルコ・ポーロがフビライ汗に、訪ねたさまざまな都市の話を語るという設定ですが、つまりそのイタロ・カルヴィーノが作り出す都市ひとつづつが、豊かな発想をもって生まれでているわけで、最初は相当戸惑いました。
でも慣れてくるとちょっと飛んでるその発想が快感になってきたような気がします。

実は私は構成面で実験的な小説というのはあまり好みませんし、元々新聞の連載のように少しづつ提供されるのも性に合わないのです。
それぞれの題名に1〜5の番号がふられた散文詩のようなイメージの世界。その並び方に作者は美を追求しているのかもしれないのですが、私としては1〜5は通しで読んだ方が楽しめて、作者の美意識は文章の繋がりの点で私にとっては残念な結果を生み、申し訳ないのですが「実験しないで」が私の意見となってしまいました。
でもこれだけ書いておきながら、この作品の不思議さは好きです。最後まで一読したあと、フビライ汗とマルコの会話の部分だけを拾って読んでみました。そうすることに意味があるような気がした、というよりその部分が好きだったのです。
はたして、哲学的で禅問答のようでもある汗とマルコの会話は、その部分を抜き出して読んでみれば繋がっていて美しいのです。

「物語を支配するものは声ではありません、耳でございます」

 この言葉が深いです。同じ物語も聴く者の理解力や想像力によって別のものになるというのです。この本全体をどう読むのかが読者に委ねられているのを感じます。

旅に、特にヴェネツィアあたりへ行くのなら、カバンに忍ばせたい一冊かも知れません。
<030930>


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